ファンタジーは金沢から始まった

2021.03.12

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今回は、当院のある石川県金沢市生まれの文豪・泉鏡花についてお話します。

1873年に石川県金沢市の下新町にて誕生した泉は早くに母を亡くし、将来像の見えない学生生活を送る不安定な少年時代を過ごしていましたが、1889年、16歳の時に尾崎紅葉の『二人比丘尼 色懺悔』を読んで衝撃を受け、文学を志すようになりました。1891年には鏡花は紅葉への弟子入りを実現させ、賢明な姿勢で雑用などに取り組み師匠からの信頼を得ていきました。

しかしそれ以降、紅葉の後ろ盾がありながら思うように連載を得られず作家としては苦しい状況が続き、挙句に実家の全焼や稼ぎ頭であった父の他界といった苦難が相次ぎ、鳴かず飛ばずの現状にも拘わらず文学で食べていくしか家族が生きる方法が見つからないほどに追い込まれます。しかしそんな苦境の中で鏡花は傑作を生み出し、人気作家として注目されるようになっていきました。

鏡花の傑作として、前述の苦難を抜け出すきっかけとなった1895年発表の『夜行巡査』などがよく挙げられますが、中でも代表作と称されるのは1900年発表の『高野聖』。当時、日本の文学は自然主義と呼ばれる実話に基づくリアル志向の作品がメジャーとなっていました。『高野聖』はそのような時代の中で怪奇的・幻想的な作風で異彩を放ち、注目を集めました。現在のメジャーなファンタジー小説に通ずるものも多く、泉鏡花が日本文学界に与えた影響の大きさを伺い知れます。

そんな泉鏡花の生家跡には現在、記念館が建っており金沢の観光スポットの一つになっています。

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