心因性EDって何?原因と治療方法を徹底解説
ED(勃起不全)という言葉を耳にすると、多くの方は「加齢や病気によって起こる身体的な問題」というイメージを持つかもしれません。しかし実際には、加齢に伴う血流の低下や神経の異常などが原因となる器質性EDだけでなく、心理的な要因によって引き起こされるED、いわゆる「心因性ED」が少なくありません。近年の研究では、20代や30代といった比較的若い世代において、心因性EDの割合が高いことが報告されています。
この記事では、心因性EDの原因、薬による治療の効力、ストレスとの関係、さらに「治らないのでは?」という不安にどう向き合うかについて、詳しく解説していきます。
治療については、ED治療ページで詳しく解説していますので併せてご覧ください。

💡この記事では下記の情報を得ることができます
| ✓ 心因性EDについての正しい理解 ✓ 混合性EDについての正しい理解 ✓ 心因性EDの克服法 ✓ 治らないかもと自信を無くしてしまった時の心得 |
心因性ED(精神性ED)とその症状
心因性EDとは、身体機能が正常であるにもかかわらず、心理的要因がブレーキとなり勃起がうまくいかなくなる状態で、精神性EDといわれることもあります。ストレスに直面しやすい現代社会において「いつ、誰にでも起こりうること」であり、知らず知らずのうちにトラウマを抱え「本人は原因に気づかない」場合もあります。
勃起は副交感神経が優位なリラックスした状態でないと起こりにくいですが、緊張や不安を感じると、交感神経が優位になってしまいます。交感神経優位の状態が続くと、神経伝達がうまくいかず、勃起を促す信号が性器に伝わりにくくなります。また、ストレスは血管にも影響を与え、ペニスへの血流が阻害され、勃起しにくくなることもあります。代表的には下記のような特徴が挙げられます。
- 朝立ちや自慰時には勃起が可能だが、パートナーとの性行為ではうまくいかない
- 特定の場所や初めての場面、緊張するシチュエーションで発症しやすい
初期症状として、
- 勃起の硬さや持続が不安定または不十分
- 朝立ちの回数が減少
- 性欲が低下する
などの症状が現れます。主な原因は心理的なストレス・プレッシャーによる不安や恐れに起因しますが、一度の失敗がさらなる不安を生み、次なる失敗へと悪循環に陥りやすいため、初期症状を感じている方は放置せずに早めの対応が大切です。原因は人それぞれ様々ではありますが、多くの方が当てはまるのは下記のような要因が挙げられます。
- 性行為に対する過度なプレッシャー
- 仕事や人間関係のストレス
- パートナーとのコミュニケーションや関係性に問題を抱えている
その他、うつ病・統合失調症などの精神疾患を発症しているケースや、幼少期の経験からくるトラウマを抱えている場合にも発症が確認されています。
比較的若年層に多い心因性EDですが、加齢に伴う体力や性機能の低下に対する不安や、パートナーとの関係性、過去の失敗体験に引きずられて高齢でも心因性EDを発症することもあります。
体は正常に働いているため、改善の可能性は高いですが、器質性EDと心因性EDの両方の要因が絡み合って起こるものもあり、これを混合性EDと呼びます。ED疾患保持者のうち多くはこの混合性EDにあたるというデータもありますが、混合性EDの場合は心身両面からアプローチができる専門医への受診を検討していただく必要があります。
混合性EDとは
混合性EDとは、心因性EDと器質性EDが組み合わさって起きる状態のことを指します。多くは、身体疾患や生活習慣病による血管障害が基盤にあり、これをきっかけとした失敗へのプレッシャーや自己評価の低下が悪循環を引き起こしEDに陥るケースで、この代表的なパターンは50~60代の比較的年齢層の高い男性によくみられます。混合性EDの場合は背景にある生活習慣病の根本治療を伴ったり、仕事等の日常生活が精神的な負担を加速させていることもあり、心因性EDのみと比較して治療が長期化する傾向にあります。治療の長期化は「もう治らないのでは」と不安を増幅させてしまうこともありますが、原因を読み解き適切に対処していくことが改善へ向けて何よりもの近道です。
心因性ED発症のメカニズム
陰茎の勃起と射精は交感神経と副交感神経という2種類の自律神経によって支配され、しばしば「シーソーのようにバランスよく働くことでコントロールされる」と例えられます。交感神経は運動時やストレス・不安・緊張を感じているときに優位に働き、心拍上昇、血圧上昇、血管収縮、射精を促す働きがあります。副交感神経は睡眠中や食事中、リラックスした状態のときに優位に働き、心拍低下、血管拡張、消化促進、勃起しやすい状態に導きます。
健常者であれば日中は交感神経が優位に、夜間は副交感神経が優位に働き、身体機能が調節されています。性行為の場面ではリラックスした状態で性的興奮を感じたとき勃起を促し、性的刺激により興奮が高まると射精に至ります。つまり、心因性EDを患っている方はストレスや不安、緊張によって勃起させたいときでも交感神経が優位な状態のため、副交感神経からの命令が十分に伝わらず満足な勃起状態を維持できなくなるのです。
心因の種類
心因性EDにつながるストレスやプレッシャーの種類をさらに詳しく分類しご説明します。
パフォーマンスへの不安やプレッシャーなどの現実心因
現実心因とは日常生活で遭遇する人間関係や仕事のストレスが発症の原因となるもので、原因に自覚があるケースが多いです。具体的には「妊活・不妊治療を成功させることへのプレッシャー」、「パートナーとの不和」、「失恋」、「多忙な業務による過労」、「自身の性器のコンプレックス」などが挙げられます。なかでも妊活・不妊治療では女性の生理周期・治療スケジュールに合わせて性行為や採精が求められる特徴があります。自身の生殖能力の不安、高額な治療費、周囲の挙児獲得への期待など、心因を生じやすい事例であるため悩みを持たれる方は少なくありません。ただ一般的に現実心因では原因を自覚している分、深層心因より原因を取り除きやすい傾向にあるため、治療がスムーズに進むケースが多いです。
失敗体験やトラウマなどの深層心因
深層心因とは過去に性交渉に失敗した経験や無意識下の性的なトラウマ、コンプレックス、自己肯定感の低下など、知らず知らずのうちに抱えていた心理的原因により発症するものを指します。具体的には「恋人との性行為で満足させられなかった経験」、「幼少期に受けた性的虐待」、「性に関する嫌悪感」、「性的志向・性自認に関する不安」などが挙げられます。自身で発症の機序を究明するのが難しいとされるため、専門医・心理カウンセラーによる心理療法を推奨するケースもあります。
うつ病などの精神疾患
精神疾患は性機能に大きく関係しています。うつ病や双極性障害、統合失調症、アルコール等の依存症などの精神疾患に罹患している方は自律神経のバランスが乱れている場合や性的欲求が湧きにくい場合があり、EDのリスク因子になります。さらに上記疾患の治療のために服用する抗うつ剤や抗不安剤は薬剤性EDを引き起こす薬剤の一種でもあります。場合によってはかかりつけの精神科・心療内科医にご相談ください。精神疾患が罹患している場合、心因性EDは慢性化する恐れがあります。それを防ぐべく、まずは精神科・心療内科医による治療が必要となります。
ご自身で客観的に心因を捉えることは難しい場合もあります。そうした場合は、心身共に治療ができる専門医へのご相談がおすすめです。

10代20代の心因性ED 若年層特有のED発症理由
EDと言えば中高年に多い症状というイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし、心因性EDではそうではないのです。心因性EDは器質性EDと比べ若年層に多く見られる原因とされ、10代・20代の方でもEDを患われる方は珍しくありません。一般的に10代・20代の若年層は「初体験」、「誤った性知識」、「コンプレックスによる劣等感」などの性に関する未熟さや経験の浅さから生じる不安や緊張を特に感じやすい年代です。「学校生活での人間関係」、「受験競争」、「就活」、「将来への不安」など若年層ならではの悩み・ストレスもあるでしょう。
正しい性知識を身に着け、軽い運動(ジョギングや自重を使った筋肉トレーニング、ストレッチなど)をして気持ちをリフレッシュしたり、リラックス法を見つけ継続することで自分で症状を改善することが可能な場合もあります。自分で完璧に治すことに執着せず、専門家(医師、養護教諭、学校カウンセラーなど)の力を借りるほうが良い場合もあります。お一人で抱え込まず信頼できる協力者に相談することも治療で大切なことです。
詳しくは以下の記事「10代からなるEDの原因」「中学生・高校生の早漏に悩むあなたへ」でもご紹介していますので、是非ご覧ください。
心因性EDの克服の手段
次に、心因性EDでお悩みの方がこの症状を克服するための打ち手をご紹介していきます。
克服方法① 薬による治療と効力
ED治療といえばまず思い浮かぶのがPDE5阻害薬(バイアグラ、レビトラ、シアリスなど)です。心因性EDの場合、身体的には問題がないため、薬を使うとしっかりと勃起できるケースが多く、効力が実感しやすいのが特徴です。薬の成功体験が自信につながり、「性行為に対する不安」を和らげる効果も期待できます。適切な用量を服用し硬さをしっかり出すことが重要ですがそれぞれの薬には特徴があり、人によってどの薬が適しているかも異なります。ED治療薬の比較も併せてご確認いただきながら、専門医による処方をうけ、適切な用量を守って服用し、硬さをしっかり出すことが重要です。
克服方法② ストレスマネジメント
心因性EDの根本的な解決には、治療薬による成功体験を積むことと同時にストレス要因を減らし(取り除き)、自律神経のバランスを整えることも大切です。ストレスの要因を減らすことはそれぞれの環境やお悩みによって対処が異なりますが、自律神経のバランスは以下のような生活の見直しによって改善を図ることが可能です。
- 十分な休養と睡眠
- 生活習慣の見直し(食事・喫煙・飲酒)
- 適度な運動(ウォーキングやヨガ、筋力トレーニングなど)
- 趣味やリラクゼーションで心をほぐす
- 人間関係の改善
これらは直接的に勃起機能を改善するわけではありませんが、ストレスによる過緊張を和らげることで、自律神経のバランスが整い、自然な性的反応が戻りやすくなります。
十分な休養と睡眠
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」から成り立ち、身体の恒常性(ホメオスタシス)を維持する重要なシステムです。健康な状態では、昼は交感神経(活動・緊張・ストレスに関与)が優位、夜は副交感神経(休息・回復・リラックスに関与)が優位となり、日内リズムを保っています。睡眠不足になると、このバランスが崩れます。6〜8時間の質の良い睡眠を心がけることで、自律神経が整い、ストレス耐性も高まります。
生活習慣の見直し
- バランスの良い食事:栄養不足はホルモン分泌や神経伝達に影響するため、野菜・たんぱく質・炭水化物をバランスよく摂取することが大切です。
- 喫煙習慣の改善:タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、勃起に必要な血流を妨げます。禁煙や本数を減らすだけでも改善につながります。
- 飲酒習慣の見直し:適量のアルコールはリラックス効果がありますが、過度な飲酒は神経機能を鈍らせ、勃起力低下の原因になります。節酒を意識しましょう。
日常の習慣改善が心身の安定につながり、勃起機能回復の基盤となります。
適度な運動・筋力トレーニング
勃起は陰茎海綿体への血流増加によって成立します。適度な有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)はストレス発散と血流促進に効果的です。血流が促進されることにより、末梢血管の機能を改善し、動脈硬化を予防します。これにより陰茎への血流がスムーズになり、EDのリスクが低下することが報告されています。
筋力トレーニング(無酸素運動)は大きな筋群を鍛えることで男性ホルモン(テストステロン)の分泌が高まり、性欲や勃起力の改善に寄与する効果があることが報告されています。
特に下半身(臀筋・大腿筋群・ハムストリングス)の大きな筋肉を鍛えることで、筋肉量が増えやすくテストステロンの分泌を高める他、下半身の血流や骨盤内の循環が改善し、勃起力向上にも働きます。
その他、運動はストレス軽減にも効果的です。適度な運動でリフレッシュすることで心因性EDの改善につなげましょう。
趣味やリラクゼーションで心をほぐす
趣味に没頭する時間は、心身をリフレッシュさせ、自律神経のバランスを整える効果があります。例えば音楽や読書などはリラックスすることにより副交感神経が優位になります。スポーツやアウトドアなどは、血流改善やストレス軽減によりEDの改善にも効果的です。
人間関係の改善
心因性EDの中で特に現実心因と呼ばれるものは人間関係によるストレスと大きな関係があります。
職場の人間関係:上司や同僚との摩擦、過労による慢性ストレスは心因性EDの大きな要因。
夫婦・恋人関係:コミュニケーション不足や性的失敗体験からの不安が、行為へのプレッシャーを強める。
自分の近い人たちとの関係性を改善することで、ストレスの軽減により心因性のEDの改善に繋がります。例えば苦手な相手とは距離をとってみる、恋人や家族としっかりコミュニケーションをとり一緒に外出してみるなど関係性の改善に努めるのも大切です。
克服方法③ パートナーとのコミュニケーション
ストレスマネジメントのセクションでも一部に触れている人間関係の改善の中でも、パートナーとの関係性の見直し、コミュニケーションは心因性EDの解消においてとりわけ重要度が高いです。「相手を満足させないといけない」プレッシャー「満足させられなかった」という思いが心因性EDを加速させてしまいます。そこで大切なのが、パートナーに対して正直に状況を打ち明けることです。
「実は最近、緊張してうまくいかないことがある」と伝えるだけでも、気持ちは大きく軽くなります。相手が理解を示してくれることで、プレッシャーは減り、改善につながることも多いのです。話しをしてみると、相手も「自身の魅力が足らないからか」などと不安感を打ち明けられたというケースもありました。互いの理解を深めながら性行為にのぞむことで症状が緩和される可能性もあるでしょう。
また、新しいパートナーとの性行為でも「良い印象を与えたい」「失敗したくない」というプレッシャーを強く受けやすくなります。
この緊張や不安によって交感神経が優位になると、勃起に必要な副交感神経の働きが抑えられ、勃起がうまくいかなくなることがあります。
新しいパートナーともコミュニケーションをしっかりとることや、スキンシップを積極的に行うことを心がけましょう。
克服方法④ 専門的なカウンセリング
「心因性EDだから治らないのでは?」と感じている方ほど、専門の医師やカウンセラーに相談すると改善されることがあります。
心理的背景を整理し、失敗体験や思い込みを客観的に見直すことで、改善の糸口が見つかります。特に以下のような場合には相談がおすすめです。
- 薬を使っても不安が強く残る
- 性行為そのものに対して不安や恐怖感がある
- 長期間改善が見られない
専門家による心理療法や認知行動療法などは、心因性EDの克服に有効とされています。
「治らない」と感じるときに知ってほしいこと

心因性EDの大きな特徴は、「体の機能は正常である」という点です。つまり、原因となっているのは「心の状態」であり、適切なアプローチを行えば改善する可能性は高いのです。
「治らない」と思い込むこと自体が最大の壁となり、さらに症状を悪化させてしまいます。薬の効力を試すことも、カウンセリングを受けることも、生活を整えることも、すべてが「自信を取り戻すきっかけ」になります。
パートナーが心因性EDになった時にできるサポートとは
心因性EDになった夫・彼氏はとても不安な心境で心細さを感じているかもしれまん。
パートナーが治療に協力的である症例の治療成績が良好という報告もあり、成功体験をきっかけに症状が改善するケースもあります。パートナーが出来ることとしては否定や非難をせず、安心感を与え、必要に応じて治療に協力することが大切です。パートナーが治療に迷われているようであれば相談しやすい態勢を整えることも有効でしょう。
また、性行為を工夫することも心因性EDに有効な場合があります。心理的負担にならない程度に普段と異なる刺激や前戯の時間を長めにとることで、緊張緩和や倦怠感抑止が期待できます。
まとめ
心因性ED(精神的ED)は、ストレスや緊張、プレッシャーといった心理的要因によって引き起こされます。薬の効力は高いですが、根本的な克服方法はストレスの軽減・生活習慣の改善・パートナーとの信頼関係・専門家への相談といった多角的な取り組みにあります。
「治らない」と感じるのは自然なことですが、それは「治すための一歩をまだ踏み出せていないだけ」「治るまでの過程にいるだけ」です。心因性EDは、正しく向き合えば克服できる可能性が高い疾患です。
ギガクリニックでは医師の診察のもと、患者様の症状にあったED治療薬を処方しております。お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
心因性EDに関するよくある質問
心因性EDは若い人にも多いですか?
はい。特に20~30代の男性に多く、ストレスや不安が主因ですが、高齢の方でも発症するケースはあります。
心因性EDは、薬を飲めば改善しますか?
ED治療薬は強い効力を持ち、改善につながるケースは多くあります。薬をきっかけに自信を取り戻し、さらに心理療法を併用すれば根本的な克服に近づけます。
パートナー関係が原因の場合、どうすればいいですか?
コミュニケーション改善やカップルカウンセリングが有効です。
精神疾患がある場合でも克服できますか?
適切な精神科治療や薬物調整により改善が見込めます。精神疾患の治療に薬を服用している場合にED治療薬の服用を希望される場合は医師への相談を必ずしてください。
「治らない」と感じたらどうすれば?
諦めずに専門医に相談してください。多くのケースで改善の余地があります。
【出典】
日本泌尿器科学会
診療ガイドライン 第 3 版
https : //www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/26_ed_v3.pdf
阿部 輝夫、性と心身医学
https : //www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/38/4/38_KJ00002386569/_pdf/-char/ja
九州大学学術情報リポジトリ
男性の性機能不全の心理・臨床(3) : 新婚IMPの一症 例
https : //api.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/194/KJ00000075069-00001.pdf
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